忘却の勇者
ドームの中であらゆる状況を思案しているイクトを余所に、ドームの外では喉元を押えたレインが感嘆の声を漏らしていた。
「これが喪失魔術……」
初めて見る“失われた古代魔術”通称、喪失魔術(ロストマジック)
「……なんか地味」
真っ先に思いついた感想がコレ。
目に痛い鮮血の紅はインパクトこそあるが、相手をドームの中に閉じ込めるだけでは芸がないしパッとしない。
拍子抜け。こんなもんかとあからさまに残念そうにしているレインに、アモスは可笑しそうに微笑んだ。
「見た目はアレだが、威力は本物じゃよ」
アモスは言う。
「果たして十本の刃で、十四億二千八百五十七万の刃を受けきれるかのう?」
鮮血の砦は相手を拘束するのが主旨足る目的ではない。