忘却の勇者

自分も騎士団の団長の一人ではあるが、このような豪華で広々とした執務室は与えてもらえていない。


必要最低限の棚と机が置かれただけの、非常に狭苦しい質素なものだ。


位の差がここまで出るかと凹みながらも、与えられた仕事を思い出し、木目調のこれまた立派な机で作業を進めているサイに歩み寄った。


シキがすぐ目の前にいるというのに、サイは黙々とペンを走らせている。


いけないと思いつつも、好奇心には逆らえない。


シキはチラリと盗み見たが、どうやらそれは魔法に関する書類らしく、シキにはチンプンカンプンでなんの書類なのか全くわからなかった。


気を取り直して、業務に移る。


「サイ賢者様。直に試験が執り行われます。第三礼拝堂までお越しください」


「そうか。すぐに向かおう」


ペンを置いて立ちあがる。


試験というのは、四聖官が代々主催している魔術師試験のことである。
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