忘却の勇者
前回の試験では、サイの幻術に耐えられるか否かで合否の判断を行っていた。
幻術は専門外のサイであったが、相手はあの四聖官。
合格者は見事に0。年に一人合格者が出れば良い方と言われるくらい、高難易度の試験である。
そうこう考えているうちに、王宮の敷地内に造られた第三礼拝堂へ到着した。
シキと別れ中に入る。
眼前に拡がったのは、もぬけの殻の無機質な空間。
頭上には美しい女神のステンドガラスがあるが、それ以外は灰色の壁。
礼拝堂の中央部には十の魔法陣が描かれており、怪しい雰囲気を醸し出す。
とても礼拝堂には似ても似つかない光景の中、一人の男が立っていた。
眼鏡をかけた男はサイの姿を確認すると、一礼し笑みを送る。
サイはこの男の安っぽい笑顔が嫌いだった。
「お待ちしておりましたサイ賢者様」