忘却の勇者

男の名はオメガ。


王宮護衛魔術師部隊の隊長にして、魔王軍対策室室長。


聖者の称号を持つ、次期四聖官候補の最有力候補者である。


「まもなく試験が行われます。今回は十人の受験者が最終試験にまで残りました」


「十人か……多いな」


最終試験までの試験官は、この男が取り行っていた。


―――手を抜いていたわけじゃあるまいな?


疑いの眼差しをオメガに向ける。


聖者の称号を与えられた者は、強制的に王宮魔術師部隊に配属される。


部隊のトップはこの男。


人手不足を解消するために、わざと最終試験の候補者を多めに取っているという可能性は否定できない。


それほどこの男は、サイに信用されていないのだ。

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