忘却の勇者

「時間です」


オメガが言葉を発するとほぼ同時に、床に描かれた魔法陣が光を放つ。


淡い光の塊から現れたのは、純白のローブを羽織った十人の人間。


サイと同じくフードを眼深く被り、表情どころか性別さえも判断しかねる。


これが最終試験時の制服。見た目や性別を隠し、あくまで能力のみを判断材料にするための配慮である。


胸には番号が書かれたプレートを下げているが、それ以外の違いは背丈ぐらいであろうか。


受験者の姿を一瞥する。


どうやら最終試験まで残ったのは、オメガの裏工作ではないようだ。


四聖官を前に臆することなく堂々とした出で立ちに、質の良い魔力が感じ取れる。


宜しい。ならば……。


「これより最終試験を行う。試験内容は至ってシンプルだ」


サイの言葉にその場にいる全ての人物が固唾を呑む。

< 233 / 581 >

この作品をシェア

pagetop