忘却の勇者
「時間です」
オメガが言葉を発するとほぼ同時に、床に描かれた魔法陣が光を放つ。
淡い光の塊から現れたのは、純白のローブを羽織った十人の人間。
サイと同じくフードを眼深く被り、表情どころか性別さえも判断しかねる。
これが最終試験時の制服。見た目や性別を隠し、あくまで能力のみを判断材料にするための配慮である。
胸には番号が書かれたプレートを下げているが、それ以外の違いは背丈ぐらいであろうか。
受験者の姿を一瞥する。
どうやら最終試験まで残ったのは、オメガの裏工作ではないようだ。
四聖官を前に臆することなく堂々とした出で立ちに、質の良い魔力が感じ取れる。
宜しい。ならば……。
「これより最終試験を行う。試験内容は至ってシンプルだ」
サイの言葉にその場にいる全ての人物が固唾を呑む。