忘却の勇者

またある者は魔法陣に自身の魔力を送り込み、術を不発にさせた。


残りの者はなす術なく、魔法の業火によってその身を焼かれる。


火柱が消える。


奇襲を逃れたのは僅か三名。残りは全て床に倒れ意識を失っている。


加減をしていたお陰で命に別状はないが、戦える状態ではないだろう。


初めて目の当たりにした賢者の力。


果たして彼等がどのような行動にでるのか、サイはじっくりと彼等を観察し始める。


最初に行動を起こしたのは、五番の札を付けた受験者だった。


ローブの裾から両刃の剣を取り出すと、一目散にサイへと突撃をしかける。


魔法剣士か。


サイは冷静にそう判断し、右手に魔力を集中させる。


薄い黄緑色のオーラが掌を包み込むと、振り下ろされた太刀を素手で掴んだ。
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