忘却の勇者
剣や自身の身体に魔力を付加させて一撃の威力を高めるか、炎や雷などを刀身に纏わせて+αのダメージを与えるのが、魔法剣士の一般的な戦術である。
どちらかのパターンによっては、戦い方も変わってくる。
まずは相手の出方を伺うため敢えて攻撃を受けたサイであったが、すぐに剣を払うと後退して距離を空けた。
サイの右手には、浅い切り口が刻まれ鮮血を垂らしている。
魔力で覆った腕を難なく断ち切ったあの攻撃。
五番は不気味に微笑む。
「振動剣……」
相手の攻撃パターンは、前者でもあり後者でもあった。
刀身に超音波を当てて高速で振動させることにより、この振動によって物体を切除する。
これにより通常の刃物を遥かに越える威力が生まれ、魔力の壁を断ち切ったのだ。
素手で挑むのは少々厄介だ。
なにもない空間から銀白の剣を出現させると、今度はサイから攻撃を仕掛ける。