忘却の勇者

接近戦。五番も負けじと剣を振るう。


刀身がぶつかると火花が走り、辺りに重音が轟く。


「チッ」


五番は小さく舌打ちを漏らす。


まさか剣術までも巧みに扱えるとは、想像だにしていなかったらしい。


止むことなき怒涛の連撃。


防ぐだけで手一杯。振動剣も、魔力を極限まで圧縮させた白銀の剣を断ち切るには至らない。


攻撃を続けながら、サイは残りの受験者の動向を伺う。


結界を張って火柱を防いだ八番は、火柱から逃げ遅れた一番を治療していた。


「大丈夫か。しっかりしろ」


一番の身体に治癒魔法をかけながら、八番は一番の顔を覗きこむ。


「す、すまない。見ず知らずの人に助けられるなんて……」
< 237 / 581 >

この作品をシェア

pagetop