忘却の勇者
接近戦。五番も負けじと剣を振るう。
刀身がぶつかると火花が走り、辺りに重音が轟く。
「チッ」
五番は小さく舌打ちを漏らす。
まさか剣術までも巧みに扱えるとは、想像だにしていなかったらしい。
止むことなき怒涛の連撃。
防ぐだけで手一杯。振動剣も、魔力を極限まで圧縮させた白銀の剣を断ち切るには至らない。
攻撃を続けながら、サイは残りの受験者の動向を伺う。
結界を張って火柱を防いだ八番は、火柱から逃げ遅れた一番を治療していた。
「大丈夫か。しっかりしろ」
一番の身体に治癒魔法をかけながら、八番は一番の顔を覗きこむ。
「す、すまない。見ず知らずの人に助けられるなんて……」