忘却の勇者

「困った時はお互い様だ。お互い協力しようぜ」


エゲツナイ奴だ。


治癒をしながら、八番は一番に幻術をかけていた。


恐らく自分に服従するような幻術を仕込んでいるのだろう。


今回の試験は十分後“立っていれさえすれば”合格となる。


やたら無暗に戦ったところで、勝敗は見えている。


ならば自分を守る盾を用意して、サイの猛攻を耐え抜いた方が効率的だと八番は判断したのだろう。


そしてもう一人、魔力の相殺を行った三番はこちらを舐めまわすように視線を送っている。


制限時間は残り六分。そろそろケリを付けようか。


「この野郎!」


痺れを切らしたのか、五番の攻撃が大ぶりになった。


五番の一撃を巧みに受け流すと、相手の腹部に左手を翳す。
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