忘却の勇者
するとサイの掌に魔法陣が浮かび上がり、凄まじい衝撃波が発生して五番の身体を吹き飛ばした。
数メートル先の壁に激突し、ズルズルと床に倒れ込む。
次に狙いを定めたのは、先ほどから静観している三番。
切っ先を向けて駆け寄るが、相手は一歩も動じることなど立ち尽くすのみ。
怪しいとは思ったが、構わず剣を突き立てる。
剣は三番の腹部に突き刺さり背中へと貫通したが、手応えのない感触が両腕に伝わった。
やはり囮(ブラフ)か。
想像通り、これは囮。
三番の身体から無数のツタが皮膚を突き破り、サイの身体に巻き付いてきた。
本体は自らの身体を透明にし、部屋の隅で囮にかかったサイを眺めている。
三番もまた八番同様、サイに直接攻撃をするつもりはないらしい。
あくまで制限時間の間生き残るための最善な策を行使している。