忘却の勇者
透明化を解き、ツタに捕縛されたサイに近づく。
口元に笑みを浮かべてはいるが、三番は覚束ない足取りをしていた。
「擬態を作るのに相当な魔力を使ったみたいだな」
八番が嫌みタップリに声をかけるが、三番は無視を決め込んだ。
中途半端な囮では四聖官の目を誤魔化すことなど出来やしない。
ましてや相手は歴代最強と謳われるサイ賢者。用心に用心を重ねてもまだ足りぬくらいの相手である。
捕縛には成功したが、三番の様子からしてそう長く保つことはないだろう。
無視されてイラッとした八番だったが、このまま制限時間になれば試験は合格。
「とりあえず、時間稼ぎをしてくれた五番と三番に感謝すべきか。なあ一番?」
自分の倍はある巨体の一番に同意を求めると、一番は黙って頷く。
瞳に生気はない。完全に八番の手足となっている。
「さて一番。このまま時が過ぎれば一応貴様も聖者の一員だ。誰のおかげで聖者になれるのか言いたまえ」