忘却の勇者
「……ロベルタ様のお陰です」
「そう、アタシのお陰だ。だからこれからお前はアタシの下僕に」
―――なにかが倒れる音がした。
八番は背後を振り向くと、そこにはうつ伏せに倒れた三番と、何事もなかったのかように三番を見下ろすサイの姿。
擬態とツタは消炭となり横たわっている。
「やっぱそう簡単にはいかないか。一番! 死ぬ気でアタシを守りなさい!」
後ろに立つ一番に指示を出すが、返事が一切帰ってこない。
視線だけを後ろにやると、驚愕のあまり八番は目を見開きその光景に絶句した。
背後に立っていたのは、一番ではなくサイ賢者。
「嘘……」
まさに早業。
頚椎を手刀で打つと、あっさりと八番は地に伏せた。