忘却の勇者
医務室へと転送したようだ。
彼等の姿は消え、礼拝堂にはサイとオメガの二人が残る。
「それにしても、最終試験に分身を寄こすのは如何なものかと思いますよ」
サイ……いや、サイの分身はオメガへ初めて視線を合わせた。
「ただのハンデだ。オリジナルの私が出たら試験にならんだろ」
「とはいえ由緒ある試験に分身を送るのは些か問題だと思いますが? だがこれで今回も合格者は0ですか。現場は人手不足だというのに、四聖官殿が羨ましい限りです。
高みの見物で面倒事は全て我々に押し付けてくださいますので、お陰で魔術師部隊と対策室に特別資金がたんまり落ちる」
皮肉交じりの笑みを浮かべ、眼鏡のフレームを押し上げた。
喰えん男だ。それになにより……。
気に入らない。
「オメガ、立場をわきまえろ。分身とはいえ貴様は四聖官の御前にいるのだ」
「御気分を害したのであれば申し訳ありません。ですが現場の意見として頭の片隅に置いてください」