忘却の勇者

一人だけラフな格好をしている見た目二十代の青年は、ライフルを所持してこそいないが双眸の青い瞳を三人に送っている。


嫌な予感。


こういう勘は鋭いコーズ。マリも異様な雰囲気に、背筋に悪寒が走った。


「君達だね。ネシオル王国の密入国者というのは」


予感的中。しかも身元も割られている。


青年は笑みを浮かべてこそいるが、事務的な声色で言葉を続ける。


「単刀直入に聞こう。君達はなんの目的でこの国にやってきたんですか? あまり手荒な真似はしたくないのだけど、事と次第によっては……」


ライフルの銃口が向けられる。


その気になればマリの魔法で防ぐことも出来るが、ここで一悶着を起こすのは避けたいところだ。


幸いなことにリーダー格の青年は、交渉の場にはついてくれるようである。


「へぇ、奇遇だな。俺達も到着早々手荒なことはしたくねえ。とりあえず話の前にあんたの名前を教えてくれねえか?」

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