忘却の勇者
義賊としての経験が、こういった交渉の場に活用される。
伊達に何度も死線を越えてきたわけじゃない。
まずはお互い様子見。
相手からは少しでも多くの情報を手に入れ、自分達の情報開示は極力抑える。
コーズの交渉術が発揮される状況だ。
「そういえば、まだ名を名乗っていなかったね。僕は『鉄血の十三騎士』のケイ。この国の軍事最高司令官だ」
十三騎士? 軍事最高司令官?
小首を傾げるオレオとコーズ。
わけがわからないという表情をしている二人だが、マリだけはケイという青年の言葉の意味を理解していた。
二人にだけ聞こえる声量で耳打ちする。
(オレオ! 早く自分が勇者だってバラしちゃいなさい!)
(え、なんで?)