忘却の勇者
「ま、待ってください! 僕達は魔王を倒すために―――」
「話は後だ勇者殿。少尉、至急エクターに連絡を入れてくれ。彼を監視役につける」
「おい! 聞けっつってんだろ!」
声を荒げるコーズ。
ただでさえ一分一秒が惜しい状況で、身柄を拘束された挙句ネシオル王国に強制送還されればここに来た意味がなくなる。
時間のロスは魔王軍による被害をその分増やす。
もはや交渉の余地はない。こうなったら強行突破だ。
コーズはナイフを手に取り、足首の魔具の力を解放させた。
ケイの背後を取り、彼を人質にしてこの場から立ち去る。
強引ではあるが、このまま拘束されるよりかは幾分マシだ。
魔具の開放によりコーズの瞬発力は勇者であるオレオを軽く超えて、目にも留まらぬスピードでケイの背後を取った。
後はナイフを彼の喉元に宛がえばいいだけ。