忘却の勇者


もらった。


そう思った矢先、コーズの右手首が何者かによって掴まれた。


「なっ!?」


掴まれた衝撃と突然のことによる動揺でナイフを手放してしまう。


攻撃を防いだ目の前の人物は、柔らかい笑みを向けながら唇を動かす。


「残念だけど、私にスピードは通用しないよ?」


そのまま足を払うと、態勢を崩されたコーズは仰向けに倒れ、地面に縛りつけるようにコーズのミゾオチに蹴りを入れて抑え込む。


痛みで目を瞑ってしまい、次に網膜が写し出した光景は、眉間に狙いを定めた拳銃の銃口と、宝石のような鮮緑色の双眸だった。


「「コーズ!」」


オレオは黒刀に手を伸ばし、マリは懐から魔具を取り出そうとしたが、


「動くな」


ケイの一言により動きを止めた。
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