忘却の勇者

周りの兵も、ライフルを構え標準を捉えている。


「刀を抜いた瞬間こいつを撃つ。懐に隠している物を使っても同様だ」


視線はコーズに向けたままケイが言う。


二人の立ち位置はケイの背後。


完全な死角。だというのに、ケイは二人の行動をピタリと言い当てた。


それだけじゃない。彼はコーズの奇襲も簡単に防いでいる。


あの至近距離で、しかも魔具使用中のコーズの奇襲を防ぐのは、オレオでも不可能に近い。


タダ者でないことはマリの証言からわかってはいたが、こうして目の前でその力を見せつけられては言葉も出ない。


「てめぇ……俺達は魔王を倒すためにここに来たんだ! こんな所で時間を喰ってる場合じゃないんだよ!」


怒りのあまり暴言を吐くが、そんな挑発に彼が乗るはずもない。


一言「静かにしろ」と言い放ち、口元に微笑を刻んだ。


すました表情が気に入らない。コーズは堪らず舌打ちをし言葉を続ける。
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