忘却の勇者
オレオに迷惑をかけるわけにはいかない。その一心だけで、残酷な現実に耐えた。
「……オレオ」
あなたがやったの?
その問いは、謎の唸り声によってかき消された。
「もう来たか。早いな」
「なに? なにが来たの?」
「血豹の仲間さ。一先ず体制を立て直す」
黒刀を腰の鞘に戻すと、オレオはマリを軽々と抱きかかえた。
きゃっと小さな悲鳴を上げるマリ。
無意識にオレオの首に手を回すが、なんだか恥ずかしくなって顔を紅潮させる。
羞恥心に襲われるが、オレオは気にしていないのか、はたまた気づいていないのか。
左手でマリを抱きしめると、その場から逃げるように走り出した。