忘却の勇者
エクターが扉を叩くと、返事を待たずに扉を開けた。
家具もそこそこな質素な空間。
その空間の主は頬杖を付けながらニッコリと微笑みかけた。
「気分はどうだい?」
コーズの眉間に皺が寄る。
今もっとも会いたくない人物が目の前に現れたのだ。渋い顔の一つや二つ仕方がない。
「牢獄のベッドは堅くて冷たくてとても寝心地が良かったですよ司令官様」
皮肉をチクリ。
けれど全く意に介した様子はなく、ケイは目の前のソファに座るよう促した。
オレオとマリはすぐに腰かけたが、コーズはあからさまに嫌そうな顔をして渋々ソファに座りこんだ。
「オレオ君とマリさんはどうでした?」
「はい、僕は快適でした。ケイさんが渡してくれた羽毛布団のお陰で、グッスリ眠れましたし」