忘却の勇者
「え!? ちょい待ち! 俺なんも渡されてないけど! 普通に薄っぺらい生地だったけど!」
「だってコーズ『お前なんかの御情けはいらねー』って突っぱねてたじゃない。ていうか人の話ちゃんと聞いてなかったでしょ?」
「うっ……それは……」
図星。コーズはケイの話に一切耳を傾けていなかったのだ。
「ご飯も美味しかったです。あんなぶ厚いお肉初めて食べました」
「はぁっ!? なんでお前だけそんないいもん食ってんだよ! 俺なんてご飯とみそ汁と焼き魚という超質素な飯だったぞ!」
「だってコーズ『お前が提供する飯なんか食えるか』って突っぱねてたじゃない。ちゃんと人の話聞いてないからよ。あー美味しかった。って結局喰ってんじゃない」
「だって腹が減って……そんなに美味かったのか……」
「お部屋もわざわざ客室を用意してくださって本当にありがとうございます。なんか捕まってるって実感がなかったなぁ」
「へ!? え、ちょ、な、なにそれ? 俺普通に牢獄だったんですけど? 鉄格子の中だったんですけど!」