忘却の勇者
これ以上の説明は時間の無駄と判断したのか、ケイは肩を竦めて手にしている書類を置き読み上げた。
「結論から読み上げよう。オレオ=カリバーンのDNAとサンプルのDNAの一部分が完全に一致。一致した箇所は勇者の血筋にのみ現れる特徴だっため、オレオ=カリバーンを勇者の血筋と断定する……だそうだ。疑ってすまなかったねオレオ君」
「けっ。だから最初っから言ってたじゃねーか」
「とはいえ君達が不法入国者であることに変わりはない。裁きはキッチリ受けてもらうよ」
本当の目的はこちらか。
怪訝な表情を崩さずに、コーズは内心舌打ちをする。
「裁きとは、強制送還ですか?」
マリが尋ねる。
その声色は不安を帯びていて、微かに震えていた。
「本来ならそうだが、勇者一行がこの国に来た理由が魔王討伐に関することならば話は別だ」
「それじゃあこの国に滞在できるんですね!」