忘却の勇者
「一応ね。ただ流石に無罪放免というわけにはいかないが、君達が私の提案を聞き入れてくれるならば、私の権力を行使してなんとかしてみよう」
軍のトップが規則と法を破るわけにはいかない。
ケイの立場もわかってはいるが、それでもコーズは気に入らなかった。
コーズがそこまでケイを嫌っているのは、なにも意図も簡単にやられたからとう一方的な理由だけではない。
本当に気に入らない理由は―――
「……なんだよ。その提案ってのは」
ぶっきらぼうに答えるコーズに、ケイは目を細め柔らかい笑みを浮かべた。
ケイの提案は、至ってシンプル且つ非常に危険な内容だった。
「人命救助?」
「嗚呼。先日軍の小隊がある洞窟の調査に向かったのだが、昨日からなんの連絡もないのだ。なんらかのイレギュラーが発生したのは確定的で、おそらく洞窟に巣くう魔物の群れにでも遭遇したのだろう。
すぐにでも救助部隊を送りたいんだが色々と問題が多く……そこで君達にエクターと共に洞窟の調査に向かってほしいんだ」