忘却の勇者
「そんなに大事な兵士なら、末端の騎士なんか送らないでお前自ら行けばいいじゃねえか。鉄血の十三騎士の初期メンバーであり、四聖官と同等の力を持つという上位メンバーのケイ様御本人がな」
またコーズったら失礼なこと言って。そろそろ注意したほうがいいかしら。
溜息を洩らしながら窘めの言葉を紡ぎだそうとしたが、それより先に小さな笑い声が執務室に響いた。
声の主はケイ。
笑いは徐々に声量をまし、腹を押えて目じりには涙が滲み出す。
コーズの憎まれ口を完全無視してきたケイだが、ついに堪忍袋の緒が切れてしまったのだろうか。
恐々とするマリだが、どうやら彼女が考えているようなことではないらしい。
入り口に立つエクターも、口元に手を当てて笑いを堪えていたのだから。
ど、どういうこと?
ようやくケイの笑いが収まると、彼は目じりに溜まった滴を拭い、落ち着きを取り戻すように息を一つ吐いた。
「いやー済まない。どうやら君達はずいぶん大きな勘違いをしているようだね」