忘却の勇者
まだ十一時なのにこの寝つきの良さ。お子ちゃまである。
「コーズってやけにケイさんに突っかかるよね。なんでそんなに目の敵にするの?」
何気なく聞いてみただけだったが、途端にコーズは神妙な顔つきに変わってしまい、グラスに注ごうとした赤ワインをテーブルに置いてしまった。
なにか不味いことを聞いてしまったのかと不安になるマリだが、コーズは自嘲気味に微笑むと手慰めに乾き物を弄りながら、ポツリポツリと言葉を発した。
「あいつ……ドンピシャなんだよ」
「ドンピシャ? なにが?」
「ミウの……好きなタイプに」
……はぁ?
「ゴメン。全くもって話の趣旨が見えてこないんだけど、つまりどういうことなの?」
「だーかーら! あいつがミウのタイプにドンピシャなんだよ! 背丈も容姿も見た目も、昔ミウに聞いた好きな男性のタイプにドストライク!」
「いやだから、どうしてそれが毛嫌いする理由に繋がるわけ?」