忘却の勇者
でもそれは……。
「勇者の一族は魔王軍の残党に惨殺されたっていうだろ。だからオレオは過去を思い出したくないんじゃないか?」
勇者によって深手を負った魔王。
魔王の敵と言わんばかりに、魔王軍の残党が勇者の一族を虱潰しに虐殺していた。
もともと勇者の血を引く者は長い歴史の間で少なくなり、純血は極僅か。
人里離れた辺境の地で細々とコミュニュティを形成していた勇者の一族だが、それが仇となり助けを求めることもなく魔王軍に攻められ絶滅した。
今や勇者の血を引く者はオレオ一人。
どのような過程でオレオが生き残ったのはわからないが、過去を思い出すのも辛い経験をしてきたはずだ。
勇者とはいえまだ十五の少年。
過去を過去として語るには、まだ傷が癒えていないのだろう。
「そっとしてあげようぜ。あんなちっこい身体に色んなもん背負ってるんだ。変に負担をかけるのは可哀そうだ」