忘却の勇者

「なんだそれ? 眼鏡?」


「ネシオル産の魔具さ。これを付ければ煙の中でも敵の姿はハッキリ見える」


後は遠距離攻撃ができる魔具でチマチマ攻めてやる。


前回の反省点を生かしているようだ。


騎士であるイクトに接近戦を持ち込んでも勝ち目はない。ならば遠距離戦というわけだ。


指輪型の魔具をセットして準備を始めるコーズだが、その準備は無駄に終わった。


突如突風が巻き起こると、辺りに充満していた煙が全て晴れてしまったのだ。


呆気にとられる二人。


洞窟の真ん中に立っていたのは、両手に剣を携え、腕を広げているイクトの姿。


まさかこいつ、剣圧で風を起こしたのか?


コーズの脳裏に、剣を手にしながらその場で一回転するイクトの姿が脳内再生させる。


うわ、ダッサー。
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