忘却の勇者
もうサングラスは使い物にならない。
さっさとしまうとコーズはエクターに目を配る。
コーズでは逃げ回るだけで精一杯。悔しいがエクターに頼るしか他ない。
彼の能力は未知数だが、賭けるしかないだろう。
「子供騙しが。図に乗るなよガキ共!」
駆け出すイクト。
やれやれといった風に肩を竦めると、エクターはイクトに視線を合わせる。
瞳術の発動は、イクトの身体が硬直したことによって確認された。
……なんだこれは?
身体が動かない。いや、正確には動きが制限されたと言った方が正しいだろう。
首や両手は問題なく動くが、腕や足などの身体の大部分が動かない。
無論こんな状況は場数を踏んでいるイクトでさえ初めてのことだった。