忘却の勇者

「貴様……俺に一体なにをした!」


「なにって単純な話さ“あんたの時を奪った”それだけだ」


時魔法。


普遍的且つ絶対的な時の流れの中で、術者が選んだ対象物をその流れから隔離する高等魔術。


とどのつまり、特定の物体の時を止める。それが時魔法である。


魔法発展国のネシオル王国でさえ、時魔法を扱える魔術師は多くない。


使えたとしても、それは動きを早めたり遅くしたりという程度で、エクターのように完全に時を止めることは賢者クラスの高い技術を要する。


しかも彼は無音無動作で瞬時に時魔法を放った。


これがなにを意味しているのかは、敵であるイクトが一番わかっているだろう。


鉄血の十三騎士NO.Ⅳ。その実力は確かなものだ。


「お前……凄い奴だったんだな」


疑っていたコーズだが、こうして彼の力を見せつけられては認めるしかないだろう。
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