忘却の勇者
薄茶色の世界に、六つの紅い瞳が確認できた。
血豹たちは無傷。それどころか先ほどの攻撃でさらに殺気だっている。
剥き出しになった犬歯からたっぷりの涎が垂れたが、オレオは臆することなく対抗するかのように切っ先を彼らに向けた。
「マリは危ないから下がってて。すぐに終わるから」
「すぐ終わるって、三匹もいるのよ!?」
「大丈夫大丈夫」
顔だけ振り向き、ニッコリ微笑む。
余りにも余裕に満ちた表情で、それ以上詰問することができなかった。
血豹が飛び掛る。
同時にオレオも地面を蹴り、黒刀を振った。
一瞬で互いの背後へ移動した両者。その間約一秒弱。
その一秒で、勝負はついた。