忘却の勇者

するとバチバチと常に音を立てていた魔封陣が静かになり、紫色が徐々に色を失い消滅する。


「魔封陣の強制解除だと?」


魔封陣の解除もそうだが、少年の雰囲気の変化にイクトは当惑した。


なにをしやがったこのガキ。


なにかがおかしい。歴戦の勘がそう告げる。


オレオは黒刀を地面から抜く。


仕掛けてくる……!


剣を構えた瞬間だった。


キンッという音とともに、構えた剣が中程から綺麗に折れて、宙を彷徨った刃が地面に突き刺さる。


漆黒の瞳と視線が絡む。


反射的にバックステップを踏むと、二撃目が前髪を掠りパラパラと髪の毛が舞った。


攻撃が見えなかった。
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