忘却の勇者
血豹の首筋から己の皮膚と同色の体液が噴出し、身体を地面へと預ける。
黒刀についた液体を振り払うと、オレオは何事もなかったのかの用に刀を鞘に戻した。
「悪いけど、お前たちの餌になってる場合じゃないんだ」
手に残る、生を殺めたリアルな感触。
振り払うかのように拳を握ると、マリに笑みを向けた。
当のマリは緊張の糸が切れたのか、腰が抜けてヘニャリと座り込んでいる。
「こ、怖かったぁ……」
ホッと溜息。
安心しきっていると、マリの左頬になにかが掠った。
頬からは血が滲み、後ろから変な呻き声がする。
そーと後ろを振り向くと、そこには眉間に黒刀が刺さった血豹が倒れていた。
血豹はもう一匹いたのだ。