忘却の勇者

コートの袖から覗く細い手首は、内出血のせいか皮膚が変色している。


今の一撃で、筋繊維が何本か千切れたのだろう。


身体がオレオの力に耐えられていない。


それでもオレオは剣を振るう。


感情もなく、ただ目の前の敵を倒すために―――






オレオの加勢も考えたが、あの戦闘を見ればその考えは払拭された。


あんな戦いに付いて行けるわけがない。自分が出て行っても足を引っ張るだけ。


それよりもまずやるべきことがある。


「待ってろ。すぐにこんな傷塞いでやる」


魔封陣の解除を確認し、コーズの傷口に両手を当てながら右腕のブレスレットに魔力を注いだ。


こんな時のために用意して置いた魔具が役に立つ。
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