忘却の勇者
掌から淡い黄色の光が放たれる。
慣れない魔具の操作に苦戦しながらも、意識を集中させて回復魔法をかけ続ける。
が、それでも出血は止まらない。
出血量が多すぎる。魔具のレベルも低すぎる。
考えろ。死ぬ気で考えろ。なにか答えがあるはず。
「時魔法で出血を……駄目だ。それじゃあ血流も止まる。全身の時を完全に止めれば……それも駄目だ。あまりに危険すぎる。下手すりゃそのまま一生……」
思考を止めるな。助ける手立ては必ずあるはずだ。
「いや、一時的に血流を止めてその間に血管を再生させれば……だから魔具のレベルが低すぎるんだって。やはり全身を……だがそれじゃあ根本的な解決にはならない。ああ、クソッ!」
考えれば考えるほど、無情にも時が過ぎて行く。
呼吸も乱れてきた。このまま出血が止まらなければ本当に―――
「ゴフッ……はぁ……えく、たぁ?」