忘却の勇者

掌から淡い黄色の光が放たれる。


慣れない魔具の操作に苦戦しながらも、意識を集中させて回復魔法をかけ続ける。


が、それでも出血は止まらない。


出血量が多すぎる。魔具のレベルも低すぎる。


考えろ。死ぬ気で考えろ。なにか答えがあるはず。


「時魔法で出血を……駄目だ。それじゃあ血流も止まる。全身の時を完全に止めれば……それも駄目だ。あまりに危険すぎる。下手すりゃそのまま一生……」


思考を止めるな。助ける手立ては必ずあるはずだ。


「いや、一時的に血流を止めてその間に血管を再生させれば……だから魔具のレベルが低すぎるんだって。やはり全身を……だがそれじゃあ根本的な解決にはならない。ああ、クソッ!」


考えれば考えるほど、無情にも時が過ぎて行く。


呼吸も乱れてきた。このまま出血が止まらなければ本当に―――


「ゴフッ……はぁ……えく、たぁ?」
< 311 / 581 >

この作品をシェア

pagetop