忘却の勇者
だからコーズの死体を目の当たりにしても、淡白な感想しか浮かんではこなかった。
死んでる。死体。ただの骸。
苦笑する。冷静に自己分析だなんてキャラじゃない。
棺の向かいに立つオレオも、なんの感情も見せず視線を床に落としている。
彼もマリと同じ心境なのだろう。
心の中のもう一人の自分が、自分自身を客観的に観察している。
それでも死の冷気を指先で味わい続けていると、沸々と胸の底から感情が音を立てた。
イクトが憎い。なにも出来なかった自分が憎い。
怒りと後悔と悲しみと。
複雑な感情が混ざり合い、身体の奥底で渦を巻く。
すると、コツコツと背後から足音が響いた。
振り向くと、後ろに部下を従えたケイが歩いてくるではないか。