忘却の勇者
血の気が引く。
もしこの黒刀が飛んでこなかったら、確実に噛み殺されて……ん? 黒刀が飛ぶ?
「間に合って良かった! 怪我はない?」
「……ねえ、これ投げたのオレオ?」
「そうだけど、それが……」
言葉を呑んだ。
マリの目には、大量の涙が貯まっていたのだ。
「馬鹿っ! ちょっとでもコントロールミスったら私に直撃してたじゃない! 凄く怖いじゃない!」
「だ、だって、飛刀の方が確実に素早く仕留められるし……。お願いだから泣かないでー!」
魔物を一瞬で仕留められるオレオでも、女の子の涙には弱いのだった―――