忘却の勇者
マリは泣きつかれたのか、すっかり熟睡。
マリを背中に背宵ながら街に戻ったオレオは、討伐の証拠になる血豹の耳を主人に手渡した。
もちろん主人は大喜び。これで魔法樹を取りに行けると、オレオに抱きついてきたくらいだ。
「疲れただろ。今日も泊まっていきなさい。ごちそうを用意してやるから」
主人は店の奥に招こうとしたが、オレオは首を横に振ってそれを断った。
「いえ、僕はもう行きます」
「いいじゃないか、もう一晩くらい」
「実は急いでいる身なので、あまり長居はできないんです。気持ちだけで十分です」
残念そうにする主人。
オレオは別れの挨拶を済ませると、逃げるようにこの街から去っていった。
マリには別れを告げずに……。