忘却の勇者

一般人には法則性のない文の羅列に見えるが、実は隠された法則が存在する。


ケイはその法則を瞬時に見つけ出し、これがネシオル王国の暗号文である確証を得た。


無論初見でこの法則を見つけ出すのは容易いことではない。


彼らは随分前からネシオル王国の暗号文の法則性を見つけ出している。


つまり、アモール帝国にはネシオル王国の情報は筒抜けというわけだ。


無論、王府もそんなことは百も承知だ。


そのためネシオル王国では機密文書を取り扱う際には魔具を介して暗号化を行う。


魔法技術には疎いアモール帝国の暗号解読班では、魔具を介せば暗号を解読される心配はまずない。


だがユーウェインが差し出したこの文書は違う。


一昔前の、魔具を介せず暗号化された機密文書だ。


過去の暗号など、もはや暗号として成り立たない。これでは機密文書もただの文書だ。


とすればこの暗号文が意味することは一つ。
< 334 / 581 >

この作品をシェア

pagetop