忘却の勇者
怒らせたら何をされるかわからないのに、臆せず正直に答えるオレオはまさに勇者である。色んな意味で。
笑みを向けて語るオレオに、ドラゴンは羽を垂らして俯いた。
どうやら呆れているようだ。
ヤレヤレといった感じで顔を上げると、ドラゴンの声が再び頭に響いた。
『確かに見た目は普通だが、正真正銘の聖剣だ。聖剣は勇者の血を引く者が持つことで真の力を解放する。今はまだ眠っているだけだ』
ドラゴンは羽を羽ばたかせ聖剣の元へ飛んでいく。
聖剣の柄に足を乗せようとすると、柄から蒼い電流が迸った。
まるで触れる者を拒むように発せられた雷はドラゴンに襲いかかるが、すぐに上昇してそれを避わす。
柄に乗ることが出来なかったドラゴンは宙に漂い、蒼い電流が治まるのを確認すると、オレオの肩に戻った。
なんて力だ。一瞬だが、身ぶるいするほどの魔力を感じた。
茫然とする二人にドラゴンの声が響く。