忘却の勇者

『これで聖剣だと信じたか? 勇者の血筋以外は聖剣に触れることすら叶わぬ。我とて迂闊に触れれば身を焦がすことになるだろう。
貴様も知っているとは思うが、聖剣は大賢者マーリンが九十九の禁書を元に作りだした代物だ。刀身は邪心のみを断ち切り、不老不死の肉体を持つ魔王を殺めることが出来る。
だが逆にもし聖剣が魔王の手に渡れば、魔王を倒す術は失われることになる。禁書の喪失魔術を使えば致命傷を与えることは出来るが、不死の魔王では確実にトドメを刺すことは不可能だ。
そこで大賢者マーリンは、魔王に聖剣が渡らぬよう、ある一族の血を聖剣に交えた。その一族の者しか聖剣を扱うことが出来ぬように』


「それが僕達一族……」


『さて、ここからが本題だ。お前には聖剣を扱う権利と力がある。だが、お前に聖剣を手にする覚悟はあるか?』


ドラゴンの瞳がオレオを射る。


オレオは聖剣に近づくと、柄を掴んだ。


電流が走ることはなく、オレオはゆっくりと台から聖剣を引きぬいた。


「僕は魔王を倒すと決めて旅に出た。今更引き下がったら、僕の背中を押してくれた人達を裏切ることになる」


オレオは言う。


「これから何が起ころうと、僕は魔王を倒す。それだけだ」
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