忘却の勇者
力強く即答する。
迷いのない瞳に、ドラゴンは小さく微笑んだ。
やはり先代と似ているな。恐ろしいほどに。
儚くも脆いギリギリの精神の中で、真っ直ぐで揺ぎ無い覚悟を持っている。
―――果たして彼の精神は“その時”を向かえても保つだろうか。
ドラゴンの憂いなどオレオが知るわけもなく、ドラゴンの嘲笑いはそのまま好意なものとして判断した。
『それでこそ勇者の一族だ。では、貴様達を塔の外へ転送しよう』
「待って!」
転移魔法を唱えようとするドラゴンだが、マリがそれを遮った。
『なんだ小娘』
「貴方は世界の監視者なのよね? だったら、なぜ魔王が復活したのかも知っているんでしょ?」
聖剣の守護と世界の監視を任された大賢者の使い魔。