忘却の勇者
それならば、過去に起こった悲劇の全貌を知っているはずだ。
そしてマリの勘が正しければ、
「聖剣を手にしていながら、先代勇者が魔王を倒すことが出来なかった理由も知っていますね?」
勇者と魔王の戦いも監視していたはず。
ドラゴンはマリを見つめたまま宙を漂う。
するとオレオとマリの足元に見慣れた魔法陣が浮かび上がった。
『我はただの監視者だ。世界の成り行きを見守るだけ。それ以上でも以下でもない』
「待って!」
魔法陣の光が強くなる。
ドラゴンは背を向けると、二人の視界は白い世界に包まれた。
『いずれ知ることになるさ。人間と言う悪しき生物の闇を』
ドラゴンの言葉は、もう二人には届かなかった―――