忘却の勇者
オレオとマリの脳裏に浮かんだのは、救出作戦の際に訪れた例の洞窟。
まさか、そんな偶然あるわけない。
そう思うのだが、百パーセント否定はできない。
人の手が加えられていない洞窟。
そこには大量の魔物が巣くい、誰も奥深くに行ったことはない。
魔法陣を隠すには最適な場所だ。
そして、たまたま居合わせた十刀流(笑)のイクト。
ネシオル王国にいた彼が、オレオよりも先にアモール帝国の大地を踏みしめていた。
自ら指揮を取り、洞窟の侵入者を全力で排除しようとしていた。
なにもない方がおかしいだろう。
もしあの洞窟が魔王に通じる道だとしたら?
―――遠回りも無駄ではなかったということだ。