忘却の勇者

被せるように発せられたレインの言葉に、オレオの口は止まってしまった。


「で、でも、孫と二人暮らしだって……」


「そう見えても仕方ないですね。僕は勇者様に助けてもらった後、紆余曲折あってアモス様に引き取られたんです」


「なるほど、だから“様付け”だったのね」


納得するマリ。


よくよく考えれば、いくら賢者とは身内に様付けはないだろう。


「だったら余計に危険な目に合わせるわけにはいかないです」


「大丈夫、この子は強い。それに勇者の元に居たいと言い出したのはこの子からじゃ。一度言い出しだしたら聞かん子でな。連れてってくれ」


「いや、でも……」


「心配しないでください。勇者様の背中は僕がお守りします!」


そういうことじゃないんだよ!


と叫びそうになったが、背後からマリに口を塞がれてしまった。
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