忘却の勇者
ちょいちょいと指を前に突き刺すマリ。
指の先を目で追うと、体内から溢れ出る魔力で髪が逆立つアモスがいた。
細めた瞳の奥底には、殺意が色濃く浮き出ている。
断ったらヤる気だ。殺すと書いてヤる気だ。
……仕方ないな。諦めるか。
「じゃあ、レイン。僕から絶対に離れないと約束してくれる?」
「はい! 死んでも離れません!」
明るく即答した少年。
彼がどの程度の能力を持っているかは計り知れないが、アモスが大事な子を危険な場所へ送るのには何かしらの意味があるのかも知れない。
老父の考えは一切読めぬが、彼の行動はきっと正しいものだとオレオは思う。
根拠はないが、勇者の勘がそう告げるのだ。
「んじゃあとりあえず、このポーチを使ってよ」