忘却の勇者
「はぁ……またね」
溜息を溢すマリ。
一人だけ訳がわからないレインは銃を向ける兵士に視線を送り、攻撃態勢に入る。
悟られぬよう少しずつ魔力を練るが、オレオに頭を軽く叩かれ集中力を乱された。
「大丈夫だよレイン。一種のお約束みたいなことだから」
「お約束、ですか?」
「うん。不法入国者に対するマニュアルだよ」
マニュアル?
顔をしかめるレイン。
確かに自分達は不法入国者だ。しかも軍事基地のど真ん中に潜入しているのだから、彼等が武器を構えるのは普通だろう。
けれど、何かがオカシイ。
オレオとマリは気付いていないようだが、レインだけはハッキリと感じ取っていた。