忘却の勇者

「はぁ……またね」


溜息を溢すマリ。


一人だけ訳がわからないレインは銃を向ける兵士に視線を送り、攻撃態勢に入る。


悟られぬよう少しずつ魔力を練るが、オレオに頭を軽く叩かれ集中力を乱された。


「大丈夫だよレイン。一種のお約束みたいなことだから」


「お約束、ですか?」


「うん。不法入国者に対するマニュアルだよ」


マニュアル?


顔をしかめるレイン。


確かに自分達は不法入国者だ。しかも軍事基地のど真ん中に潜入しているのだから、彼等が武器を構えるのは普通だろう。


けれど、何かがオカシイ。


オレオとマリは気付いていないようだが、レインだけはハッキリと感じ取っていた。
< 358 / 581 >

この作品をシェア

pagetop