忘却の勇者
休戦条約破棄

「現時刻を持ってアモール帝国はネシオル王国に宣戦布告。約72時間後、我々アモール軍はネシオル王国に対して自衛的先制攻撃を開始する。心配しなくても攻撃対象は軍事施設のみだ。一応な」


休戦条約の破棄。戦争の再開。


たった数文字の言葉が、心の奥底に深く沈み込む。


言葉自体に質量は存在しないが、その意味を理解していればどれほどの重みがあるのかは容易に想像できる。


人が死ぬ。


人が人を殺しあう。


オレオとマリの脳裏に、ドラゴンの言葉が木霊した。


“世界の闇は貴様たちが思うよりも邪悪で強大だ。時期に大量の人間が悲痛の叫びを上げることになるだろう”


これは人間と魔物との全面戦争を揶揄しているものだと思っていた。


世界の闇は魔王。魔王軍に襲われた人間の悲鳴。


けれど現実はもっと苛酷で非情だ。
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