忘却の勇者
国と国、人と人との戦い。殺し合い。
ドラゴンの言った闇とは、同族同士で殺しあう人間のことを指していたのだ。
「……どうしてですか? 貴方は争いを嫌っていた。今は魔王に対抗するために手を取り力を合わせる時じゃないんですか!」
信じられなかった。ケイが休戦条約を破棄し、戦争を再開させることを。
彼は頭が良い。そして無駄な争いは拒む軍師だ。
そんな彼が、活動が徐々に活発化している魔王を除外視し、ネシオル王国との戦争に走ることなど考えられない。
今ネシオルを攻めても、なにも生み出さない。魔王軍の侵攻を助走するだけだ。
オレオでさえ予想できることだ。ケイが休戦条約の破棄など軽はずみな行動をするわけがない。
「だから戦争を始めるのだ。魔王を倒すために」
「言っていることと行動が矛盾しています!」
「矛盾はしていないさ」