忘却の勇者
ケイは空いている左手を上着のポケットに突っ込み、掌に収まる長方形の金属の塊を取り出した。
金属には小さいディスプレイがあり、謎の英数字の羅列が映し出されている。
解読不能な羅列にオレオとマリは訝しげな表情を浮かべるが、ただ一人レインは目を見開き視線を泳がせた。
「ネシオル王国の暗号文だ。どんな内容だと思う?」
ケイは塊をしまうと、慎重に口にした。
「四聖官が魔王を復活させ、支配下に置いているというものだ」
意味を理解するのに時間がかかった。
四聖官が魔王を復活? 支配下に置く?
理解しがたい現実が、ケイの口から語られた。
「う、嘘よ! ネシオル王国だって魔王の被害を受けているのよ。今こうしている間にも被害は増える一方、そんな馬鹿な話信じられるわけがないわ!」