忘却の勇者
「私も信じたくはなかったが、残念ながら確定情報だ。情報をリークした提供者にも連絡がついた。君たちには見せられないが証拠もある」
マリの表情が絶望の色に染まる。
四聖官が絡んでいるということは、アモスも一枚噛んでいるということなのだろうか?
疑いたくはないが、もしケイの話が本当ならば……。
レインの様子を横眼で窺う。
顔を伏せ、唇を一文字に結んでいる。
今度ばかりは、自分の女の勘が間違っていると思いたい。
アモス賢者がそんなことをするなんて……。
「四聖官が何を考えているのかはわからないが、どうせロクな事ではないだろう。魔王が本来の力を取り戻せば二カ国間のパワーバランスは崩壊し、ネシオルは敵対国である我らを攻めに来るだろう。それだけはなんとしても避けなければならない」
「そんな……なにかの間違いだ! 仮に事実だとしても、戦争は間違ってる!」
「間違っているのは四聖官だ。我々を欺け、国民を騙し、魔王の力を我が物と企む奴らこそが全ての間違いであり悪なのだ。
賢者などお笑い草だな。奴らは力に魅せられ取りつかれた、哀れで愚かな老害でしかない」